匂い

 町中を歩いていて、カレーの匂いや、魚を焼く匂いがどこからともなく漂ってくると妙に嬉しい気持ちになる。自分の家の匂いじゃなくて、ついなんだか嬉しい気持ちになってしまう。あとそれから石鹸やシャンプーの匂いなんかが漂ってくると、今度はなんだか落ち着く気分になる。きっと誰かが今お風呂に入っているんだろうと思う、あとで自分もお風呂に入ってそのまま寝てしまおうと思うのだ。そして6月や7月になると、夏草の独特の匂いも漂ってくる。そして日が当たったアスファルトから発せられる熱気の匂い。この夏独特の匂いもまた嬉しさや安心、そしてドキドキを心に残していく。こういうふとした瞬間に鼻に入ってくる多種多様な匂いは、実に様々な方法で僕の気持ちを揺さぶっていく。

 かつての恋人の顔や名前は忘れてしまっていても、その恋人がつけていた香水と全く同じ香水の匂いを町中でふと嗅いだりすると一気に当時の記憶が鮮明に蘇ったりする事もある。視覚で覚えた記憶よりも嗅覚で覚えた記憶や感覚の方が意外と忘れがたく、なおかつずっと残っていく。頭から記憶自体はとっくに消え去っていても、線香や古い家の木の香りなどを嗅ぐとどこか懐かしい気持ちになり、おばあちゃんや田舎のおばさんの事をふと思い出したりするのもそのせいかもしれない。

 相手に自分の事を忘れてほしくないと思うのなら、香水の匂いなどをこっそりと漂わせておくのが良いのかもしれない。もちろん相手が香水嫌いだったら何の意味もないのでそこは人を選ぶ必要があるが。なんだか今年の夏は久々に恋愛がしたくて仕方ないのである。最後に恋愛をバリバリしていたのは結構前になるが、その時につけていた香水をまた久しぶりに引っ張り出してつけてみるとするかな。でもその香水を嗅ぐと、また色々と当時の事を思い出してセンチメンタルな気分になってしまうから困ってしまう。まぁいいか、今年の夏で新しく楽しい思い出を作る事が出来れば、その匂いに対する気持ちだって塗り替える事が出来るのだから。

 と、ここまで書いていたら台所から美味しそうな匂いが。今日の夕飯は天ぷらかな。なんだか一気にに気分が高揚してきた。やっぱり良い匂いっていうのは、それだけで幸せな気持ちにしてくれる。だから僕もそろそろ誰かの良い匂いに包まれて眠りたいなぁなんて、そんな事を考えている今日この頃。

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